いつだったか上野動物園のパンダを見に行った時に、パンダは期待を裏切らず愛らしくて飽きずに何十分も見ていてしまったのであるが、ぼくらの見ている前でパンダはおもむろに立ち上がり観客の方へ歩いてきて、ぼくらに背を向けてじゃがみこみ、ゆっくりとうんこをした。パンダが定位置に歩いて戻りゆっくり横たわる間も、全観客の目はうんこに注がれていた。パンダは高貴な動物なので、騒いだり文句を言ったりするものは観客の中には一人もいなかった。というより全員がじっとうんこを見つめていながらもうんこのことをしゃべろうとはしなかった。パンダオーラの圧勝である。しかしそのうんこは草食動物のそれではなかった。イヌやネコやヒトのような、雑食動物のものであった。このあまりに不自然な現象を、渡辺トモコは決して見逃さなかった。渡辺トモコによるとパンダの中にはヒトが入っていて、毎日立ったり座ったり寝たり時々愛想を振りまいたりしていたがちょっとずつ退屈してきて、ある日観客の前でうんこをしたらなんだか新しい自分を見つけたような感じがして、だんだん強い刺激を求めるようになってついには前述の行為に至ったらしい。たしかにそうだとすれば全てが矛盾なく説明される。ゴーストライターは来週は上海に出張であり、今はパンダのことで頭の中がいっぱいであるが、上海動物園を訪れる時間がとれるかどうかは調整中である。
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